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2013-11-26

ソース(記事原文):CIDRAP

研究:オセルタミビル―有益という証拠が増えているのに使用は減少傾向

CIDRAP(2013年11月26日) ― インフルエンザの患者にタミフル(オセルタミビル)などの抗インフルエンザ薬を使用する際の推奨は、発症から48時間以内の治療開始が標準である。しかし、バングラデシュの子どもらを対象に行った新しい試験で、症状発現から72時間以内に治療を開始しても有益なことが判明したため、この試験は遅めの治療開始の有益性を示す初の研究と呼ばれている。

この研究の発表直後となる11月25日には、カリフォルニアで行われたある研究が発表された。皮肉なことに、その研究は、インフルエンザで入院した子どもにオセルタミビルなどのノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)を使用すれば生存率が改善する可能性があるというのに、2009年のインフルエンザ・パンデミック以降、そうした使用が減少していると示唆する。

『ザ・ランセット・インフェクシャス・ディジージズ(The Lancet Infectious Diseases)』に報告されたバングラデシュの研究では、無作為化比較試験を実施した。その結果、オセルタミビルを服用した患者らはプラセボ服用の患者と比べ、1日ほど早く症状が消えたと捉えており、また呼吸器検体中のウイルス量も少なかった。患者の治療は、発症から5日以内に開始した。

層別解析において、罹患期間の短縮は、発症3日目に治療を開始した患者には当てはまったものの、4日目、5日目に開始した患者では必ずしもそうではなかった。

「この研究は、子どもにインフルエンザの症状が出始めてから2日以上経過した後に抗ウイルス治療を開始しても、症状持続期間とウイルス出芽が有意に減少することを認めた初の臨床試験である」。この研究を後援した米疾病予防管理センター(US Centers for Disease Control and Prevention : CDC)は、プレスリリースでそう発表した。

『ペディアトリクス(Pediatrics)』に発表されたもう一方の研究では、「H1N1パンデミック2009」の期間中にインフルエンザの治療でカリフォルニアの集中治療室(ICU)に収容された子どもを調べたところ、90%がNAI治療を受けていたことが分かった。しかし、パンデミック終息宣言から2年でこの割合は63%に低下した。

また、NAI治療を受けた子どものほうが生存の可能性は高かったことも明らかにされた。研究報告には、「最近、インフルエンザに対するNAI治療の利用頻度が低下しているという事実は、重篤なのにNAI治療を受けていない子どもの死亡リスクを高めかねない」と書かれている。

バングラデシュでの研究

バングラデシュでの試験は、CDCインフルエンザ部門(CDC's Influenza Division)と、ダッカにあるバングラデシュ国際下痢性疾患研究センター(Bangladesh's International Centre for Diarrhoeal Disease Research)による共同研究だった。研究者らは2年半にわたり、カマラプール市でインフルエンザ簡易検査の結果が陽性の患者を募った。そして彼らを、1日2回5日間、オセルタミビルを服用する群かプラセボ群のいずれかに割り付けた。

研究チームが登録したのは1190人で、症状発現から48時間以内に治療を開始したのが794人、それ以降に開始したのが396人だった。患者のほとんどが子どもであり、年齢中央値は5歳だった。

全体で見ると、オセルタミビル群の症状持続期間は、プラセボ群と比べ1日少なかった(3日間対4日間)。この結果は、48時間以内に治療を開始した患者のみを対象とした先行研究と大差なかった。

この研究報告によると、48時間経過後に治療を受けた患者のほとんどは、3日目から薬を服用し始めていたという。治療開始が3日目だった患者を対象に事後分析を行ったところ、「症状持続の1日減少」は彼らにも当てはまった。ただし、この結果は「発症後4日目、5日目から治療を開始した患者には当てはまらないかもしれない」と、研究者らは述べている。

全体としては、年齢やウイルスの亜型で調整すると、「症状発現から5日以内に試験治療を受けた患者において、オセルタミビル治療は主要症状の持続期間を13%削減し、残存症状を33%削減した」という。

ウイルス出芽の減少

研究者らは、治療開始から2日目、4日目、7日目に、患者の呼吸器分泌物中のウイルス量(ウイルス出芽)も調べた。その結果、オセルタミビル治療を48時間経過後に開始した患者では、ウイルス出芽は2日目と4日目には有意に減少していたが、7日目はそうではなかった。一方、48時間以内に開始した患者では、これら3回の検査時点すべてでウイルス出芽が減少していた。

CDCのプレスリリースによると、治療開始のタイミングに関係なく、オセルタミビル治療は、呼吸器検体から分離された生ウイルスの量をプラセボよりも12%~50%減少させたという。「治療開始が発症から48時間以内でも、それ以降でも、ウイルス出芽が同じような割合で減少したことを示す研究は他にないため、この所見は特に重要である」と、CDCは発表している。

加えてこの研究では、オセルタミビル耐性ウイルスの出現はまれであり、全体で1%、2009年のH1N1型では3.9%だった。

シカゴ・ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部(Northwestern University Feinberg School of Medicine)のマイケルG.アイソンMD(Michael G. Ison, MD)は、付随論評で、「48時間経過後に治療を開始した場合の効果は低いという従来の考えに、この研究は疑問を投げかけている」と述べる。そして、治療開始が48時間以内でも、遅めでも、ウイルス出芽の量は同程度減少したという所見が最も重要だろう、と続けている。

アイソン博士によれば、この研究結果から、ベースラインのウイルス量が比較的多い患者にも治療は有益と考えられるという。「ベースラインのウイルス量が比較的多い患者や、子どもは、一般にウイルス出芽の期間が長い。したがって症状発現から48時間経過後に抗ウイルス治療を開始しても、効果を得られる見込みがある」。

カリフォルニアのICUでの研究

カリフォルニアでの研究は、カリフォルニア公衆衛生部門(California Department of Public Health)とCDCの研究者らが実施した。彼らの主な目的は、重篤なインフルエンザ患児の生存率がNAI治療で改善したかどうか、見極めることだった。

研究者らは2009年4月(パンデミックが始まった時)から2012年9月にかけて医療記録のデータを調べ、インフルエンザの診断が確定してICUに収容された患者(0~17歳)の転帰を評価した。

この研究チームが組み入れ基準を満たすと確認できたのは784例で、うち591例は定義したパンデミック期間中(2009年4月3日から2010年8月31日)の症例だった。この591例のうち、NAI治療を受けたのは90%(532例)だった。しかし、その後の2年間では、NAI治療を受けた患者は63%(193例中121例)だけであった。

死亡したのは、NAI治療群では653例中38例(6%)だったのに対し、非治療群では11例(8%)だった。この差は、有意とまではいかなかった(オッズ比(OR)0.67、95%信頼区間(CI)0.34から1.36)。

ただし、疾患重症度と関連する因子で調整した多変量モデルを使用したところ、NAI治療群と非治療群の差は有意であった(OR 0.36、95%CI 0.16から0.83)。

さらに、発症後48時間以内に治療を受けた患者らは、そうでない患者よりも生存する可能性が有意に高かったこと、また、早めの治療のほうが遅めの治療より有益だったことも判明した。

研究者らによると、子どもに対する抗ウイルス治療の減少という今回の所見は、10州のサーベイランスデータを厳密に調べた別の研究と矛盾しないという。その研究では、パンデミック期間中にインフルエンザの診断が確定してICUに収容された子どものうち、抗ウイルス治療を受けたのは84%だったが、2010~11年のシーズンにはこの割合が73%に低下したことが明らかにされている。

今回の研究報告には、「こうした結果と今回の所見から、季節性インフルエンザで重篤な患者をはじめとする入院中の患者への抗ウイルス治療を増やすよう、臨床医を教育するにはより一層の努力が必要と考えられる」とある。

フライAM(Fry AM)、ゴスワミ(Goswami)、ナハールK(Nahar K)ら、「バングラデシュ都市部においてインフルエンザ発症から5日以内に開始したオセルタミビル治療が罹患期間とウイルス出芽を削減する効力:無作為化プラセボ比較試験」。ランセット・インフェクシャス・ディジージズ2013、11月22日オンライン先行発表

アイソンMG、「オセルタミビルの最適なタイミング:バングラデシュからの教訓」。(論評)ランセット・インフェクシャス・ディジージズ2013、11月22日オンライン先行発表

ルイJK(Louie JK)、ヤンS(Yang S)、サミュエルMC(Samuel MC)ら、「重篤なインフルエンザ患児に対するノイラミニダーゼ阻害薬」。ペディアトリクス2013年12月号、11月25日オンライン発表


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