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2014-03-31

ソース(記事原文):メディカル・エキスプレス

心臓緊急手術時の患者にはビバリルジンよりもヘパリンが有効

メディカル・エキスプレス(2014年3月31日) ― 心発作後の直接的経皮的冠動脈インターベンション(プライマリーPCI)施行患者を対象に、2種類の抗凝固薬を比較したところ、ヘパリンの方がビバリルジンよりも28日時点の重大な心血管病変が有意に少なかった。この研究結果は米国心臓病学会(ACC)第63回年次科学会議で発表された。

この単一施設非盲検試験は、心発作が疑われて冠動脈造影検査(血管の状態を調べる画像検査)を受けた患者1,829人を登録したものである。患者を未分画ヘパリンを投与する群またはビバリルジンを投与する群のいずれかに無作為に割り付けた。両剤とも体内の自然発生的な血栓形成過程を阻害するもので、心臓の緊急手術時に通常投与される。主要評価項目は、全原因による死亡、脳卒中、反復性心発作、または予期せぬ再手術の複合とし、これを検討する目的で28日間にわたり患者を追跡した。その結果、これらの評価項目の発生率は、ビバリルジン群8.7%、ヘパリン群5.7%で、前者の方が有意に高いことが示された。2群間における最大の差は、ステント血栓症に起因する反復性心発作の発生率であった(ビバリルジン群3.4%、ヘパリン群0.9%)。ステント血栓症とは、ステント留置後に新たな血塊が生じて血管が詰まることである。安全性の主要評価項目である大出血については、両群間で統計学的な有意差はみられなかった(ビバリルジン群3.5%、ヘパリン群3.1%)。

主任研究者の一人でリバプール胸部心臓専門病院(Liverpool Heart and Chest Hospital)の心臓病専門医アディール・シャザド(Adeel Shahzad)博士は「ヘパリンとビバリルジンは、いずれも経皮的冠動脈インターベンションにおいて世界中で標準的に使用されいるが、どちらか一方が他方よりも優れているのかどうかについては未だ議論がある」としている。「患者背景を一致させた2つの患者群における評価項目を比較することで両剤を評価しようと努めた。その結果、ヘパリンの方がより効果的な薬剤であるとみられることが示唆された」

2012年2月~2013年11月に心発作ではないかと試験施設に主訴した全患者を、本試験の登録に適しているか判断した。適格とみなした患者については、緊急手術のための2つの試験群のうち1つに無作為に割り付けた。経皮的冠動脈インターベンションは患者の82%で実施され、手術成功率は両群で同程度であった(ビバリルジン群97.5%、ヘパリン群97.3%であった)。試験登録時における状況が命にかかわるという性質や、両試験薬が標準的に使用されていることも加味して、研究者らは患者の同意書提出を後回しにする承諾を得た。治療患者1,829人のうち、4人だけが後に同意を拒否・撤回した。

この試験施設の標準的処置の一つとして、患者は手術前に抗血小板薬2剤併用療法を受けた。具体的にはアスピリンと抗血小板薬の併用投与で、どちらの薬剤も血液凝固阻害薬である。ヘパリン群には急速投与量70単位/kg(1 kg = 2.2 lbs)の未分画ヘパリンを術前に投与し、その一方でビバリルジン群にはビバリルジン0.75mg/kgを急速投与し、引き続き1時間当たり1.75 mg/kgを術中持続投与した。

経皮的冠動脈インターベンションは、血管形成術とも呼ばれ、心臓へ血液を送る血管に狭窄や閉塞が認められた後、血管を広げるために行う手術である。カテーテルを脚または手首から挿入し、血管内を通して心臓まで進める。この手術では動脈が開存しやすくなるようにステントと呼ばれる小さい金属メッシュの管を留置することが多い。手術の間、体内の自然な血栓形成過程を妨げる一助として患者に薬剤を投与する。

シャザド氏によれば、ビバリルジンの方がヘパリンよりもはるかに薬価が高額なので、ヘパリンの標準的使用は医療提供者におけるコスト削減につながる可能性がある。

先行研究ではビバリルジンとヘパリンを比較しているが、その際、ヘパリンと別の抗凝固薬である糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤の併用を、ビバリルジンと比較検討している。シャザド氏によると、これらの試験ではヘパリン群で出血率が高いことが多く、2種類の抗凝固薬を一緒に投与されたことが原因となったのか否か判断が難しい。

今回の試験において、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤は、現在のガイドラインの下、特殊な環境で使用された。例えば、たくさんの血塊を生じた患者を対象としたことなどが挙げられる。この薬剤の使用率は両群で同様であり(ビバリルジン13.5%、ヘパリン15.5%)、出血の合併症に関して2治療群に有意差はみられなかった。

単一施設による登録や、非盲検という試験デザイン、それにコーカサス人集団が多いという点から、本試験データの解釈には限界があるとみられる。とはいえ、これは循環器内科において今までで最大の単一施設試験であるとともに、全適格患者の全員を登録した最初の大規模試験でもあり、その試験結果は適正かつ非選択的に登録した血管形成術施行患者集団のものである、と著者らは述べている。

シャザド氏は、糖タンパク質阻害剤の最良の使用法を見極めるために、さらなる研究を実施する必要があるとしている。


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