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2009-02-15

ソース(記事原文):ABCニュース・ヘルス

辛い記憶を消し去るベータ阻害薬

たった1錠の錠剤で、過去の辛い記憶と、そこから生まれる恐怖感や不安感を切り離すことができると想像してほしい。

オランダの研究者が行った新しい研究では、そのような事が可能であるという結論が出された。2月15日のオンライン版ネイチャー・ニューロサイエンスに掲載された。

メレル・キント氏(Merel Kindt)と同僚は、実験中に刷り込まれた記憶から生じる恐怖反応を(少なくとも短期間)抑えるため、プロプラノロール(Inderal)と呼ばれるベータ阻害薬を用いた。

この研究は、病的な不安障害を患い、恐怖から生まれる生理的影響に苦しむ人々の治療に、将来役立てられる可能性がある。しかし、プロプラノロールの効果の持続期間はどの位か、そしてトラウマにも何十年も前の体験に起因するものがあるが、そういったものにも効果はあるのか否かといった疑問は残っている、と専門家は述べた。

「これはとても興味深く、そして素晴らしい研究だと思う」とジェーン・タイラー氏は述べた。タイラー氏は、イェール大学で教鞭を取る精神医学の教授であり、現在、ラットにおける記憶の再固定の研究を行っている。「この薬の効果はどれほど長くもつのか、新しく固定された記憶に効果はあるのか、興味は尽きない」

バーモント大学心理学部教授のマーク・バートン氏も同様の発言をしている。「この研究により、恐怖心を抑制する方法に対する我々の理解は、確実に深まった」とバートン氏は述べた。「しかし、まだ大きな疑問が残っている。恐怖心が時間の経過と共に甦る可能性があるのだが、この薬はそれも含め、あらゆる再発リスクを抑えるのだろうか?」

人間の記憶は、コンピューターの記憶装置に似ているとよく言われる。ある記憶は、神経のRAM半導体メモリの様な場所に保管されている一方で、別の記憶は、脳のハードディスクに長期的に保存されると例えられる。これは、脳内の記憶保管庫内に保管されているファイルを完全に消去することが容易にできないという点において、実際の脳の働きとは一致しない点があるものの、的を得ている。

「恐怖の元となる記憶というのは、驚くほど簡単に甦ってくる」とバートン氏は解説した。

少なくとも恐怖心と身体の生理的結合を断ち切る方法を試すため、キント氏は、アムステルダム大学学士課程に在籍する60人の学生からパブロフ型恐怖反応を引き出した。

この研究は3日間に亘って行われた。研究初日では、クモのイメージが映し出されると、被験者に対し中度の電気ショックを与えるということが繰り返し行われた。被験者が感じた恐怖の度合いは、彼らが恐怖を感じた時の反応(恐怖誘発物を見た時のまばたきの回数)を査定し、測られた。この恐怖に関する記憶は、その後、固定された(ハードディスクに保存された)。

研究2日目。前日固定された記憶が呼び起こされた。ただし、その記憶が呼び起こされたのは、偽薬又はプロプラノロールを服用した後だけである。バートン氏によると、あたかもコンピューターのファイルに変更を加えてハードディスクに書き換え保存するかのように、この時点で恐怖の元となる記憶を自由に改ざんすることができるという。

プロプラノロールは記憶固定に影響を及ぼすことが、過去のげっ歯動物を用いた試験で既に確認されていた。問題は、ヒトがプロプラノロールを服用した時に同じ効能を得られるのかということであった。この答えは、研究3日目、被験者にプロプラノロールが投与された際に出た。恐怖誘発物(クモの写真)に対する生理的反応が、プロプラノロールを服用した人々から消えていたのである。偽薬を服用した人々にこの様な事実は認められなかったことをキント氏は発見した。

「基本的には、病理的な恐怖に悩まされる人々の治療に一歩近づいたといえる」とバートン氏は述べた。

確かに研究者達は、今回の研究結果は「最近の心的外傷後ストレス症候群を患う患者を対象に行われた予備研究の結果と一致する。その予備研究では、患者にトラウマの原因である記憶を思い出させ、その後プロプラノロールを投与した。そうしたところ、その記憶に対する生理的反応が従来のよりも弱かった」と述べた。

しかし、未だ不明な点が多い。例えば、今回の研究に割かれた時間は、あまりにも短かい。研究3日目には問題となる記憶が消えたようであるが、その後1ヶ月経ってもその記憶が甦ることはないのであろうか?そして、長期記憶の例として、成人になっても消えることのない幼少時代の非常に辛い記憶が挙げられるが、プロプラノロールはその長期記憶に対し、どの程度の効果があるのか、判然としない。

その上、今回の試験の記憶というのは、正確に言うと実際に消されたわけではない。タイラー氏は次のように述べている。「プロプラノロールによる治療を受けた被験者達は、恐怖心の元となるものを見ても畏縮することはなかったのだが、被験者本人は、それが彼らにとって恐ろしいものであると認識していたのである」
このことから、プロプラノロールの臨床的有用性は限られるだろう、とタイラー氏は述べた。

「何かに怯えるという事象には、生理的反応だけでなく、その恐怖の対象をどう捉え、恐怖が行動にどの様な影響をもたらすのかといったことが含まれる」とタイラー氏は述べた。


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