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2012-10-12

ソース(記事原文):ニュース・メディカル

ネルフィナビルがHER2陽性腫瘍の進行を遅らせる

ニュース・メディカル(2012年10月12日)― 乳癌細胞の増殖を止める能力について2,300以上の薬剤をスクリーニングしたところ、抗HIV薬ネルフィナビルは、HER2陽性腫瘍が他の乳癌治療薬に耐性を示す場合でもその進行を遅らせることを、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らは発見した。

ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(Journal of the National Cancer Institute)オンライン版に10月5日付で掲載された、この発見に関する報告の中で、研究者らは、ネルフィナビルがすでに米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration : FDA)に承認されている血中濃度で作用したことにも触れている。いわゆるHER2陽性乳癌とは、HER2タンパクが見られ、症例の25~30%を占める乳癌のことで、HER2陰性乳癌よりも悪性度が高く、またホルモン療法への反応性も低い。HER2陽性乳癌については、優れた薬物療法を探すこと、特に、すでに販売されている薬剤の『転用』により探索がスピードアップする道を探すことに力を注いでいるというのが現状である。

「新薬開発は、一から始めると膨大な費用と時間がかかり、各新規化合物を市場に出すのに推計で10億ドル、10年以上を費やすことになります」と、ジョンズ・ホプキンス大学医学部(Johns Hopkins University School of Medicine)の薬理・分子科学教授、ジュンO.リューPh.D(Jun O. Liu, Ph.D.)は話す。「既存の薬剤は、費用がかかる安全上・規制上のハードルの大部分をすでにクリアしています」そう話すリュー氏は、10年近くにわたり既存薬を『転用』する研究を行っている。

薬剤の発見を早めるため、リュー氏と同僚らは、ジョンズ・ホプキンス薬剤ライブラリー(Johns Hopkins Drug Library)を創設した。現在、このライブラリーには2,900近くの薬剤があり、そのほとんどがFDAの承認を取得している。薬剤はすべて、投与の安全性を検討する第I相臨床試験を通過している。

今回の新しい研究では、リュー氏とそのチームは患者2名からの乳癌細胞を使用するところから始まり、次に、細胞の増殖を止める能力についてライブラリーの薬剤をすべて調べた。能力の優れた70種が次の試験のために選ばれ、試験では患者7名からのもので遺伝的にそれぞれ異なる細胞を調べて、どの薬剤が最も良い働きをしたか確かめた。

そのうちの5種が、HER2陽性細胞の増殖を阻止または遅らせるその能力のために選び出された。5種のうちの1つ、ネルフィナビルが、他の薬剤よりもHER2陽性細胞に優れた作用を示すようであり、またリュー氏によればHER2タンパクそのものを阻害するように思われたことから、さらなる試験のために選ばれた。ネルフィナビルは、メラノーマ、非小細胞肺癌、膵癌に対しても幅広い抗がん作用を持つことがすでに知られていた。

HER2陽性またはHER2陰性のヒト乳癌細胞を移植したマウスでネルフィナビルが作用するか調べるため、研究チームは、プラセボまたはヒトでの投与量に相当するネルフィナビルをマウスに投与し、その後1カ月間、腫瘍サイズを測定した。ネルフィナビルはHER2陽性腫瘍の成長を遅らせたが、HER2陰性腫瘍に対する影響は認められなかった。

乳癌治療薬としてよく使われているトラスツズマブおよびラパチニブに耐性を持つようになった腫瘍の成長を、ネルフィナビルが遅らせることができるか調べるため、研究者らは研究室で培養している薬剤耐性細胞と非薬剤耐性細胞を、ネルフィナビル、トラスツズマブ、ラパチニブのいずれかで処理した。ネルフィナビルだけが、薬剤耐性細胞と非薬剤耐性細胞の両方の増殖を阻止することができた。

ネルフィナビルがHIVと闘う際は、タンパク質を分解するプロテアーゼと呼ばれる酵素を阻害することから、リュー氏のチームは同じ機序でネルフィナビルが乳癌細胞の増殖を遅らせるかどうか知りたいと考えた。これを調べるため、彼らはさまざまな種類の酵母細胞にネルフィナビルを与えた。酵母細胞はヒトの細胞と似ているため、薬剤が遺伝子に及ぼす影響の研究によく用いられている。各種の酵母を遺伝子操作することで、特定のタンパク質をあまり作らせないようにして、環境ストレスをより受けやすくした。彼らは、HSP90タンパク質をあまり作らない酵母にネルフィナビルを与えた場合に、この細胞が死ぬことを発見し、このことからネルフィナビルはプロテアーゼではないHSP90と互いに影響しあうと示唆された。

「HSP90はHER2にも結合することが知られているので、この研究は興味深いものでした。現在、私たちはネルフィナビルがこの相互作用を阻害していると考えています」とリュー氏は言う。また、「これは臨床試験の良い出発点です」とも述べている。


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