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2011-01-04

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

禁煙補助薬がどのように切望感を抑えるのかを検討した脳のイメージング試験

サイエンス・デイリー(2011年1月4日)―JAMA/アーカイブ・ジャーナルの1つであるアーカイブ・オブ・ゼネラル・サイキアトリー(一般精神医学に関する雑誌)5月号に掲載される予定で、すでにオンライン版に掲載されている2つの報告によれば、禁煙補助薬のブプロピオンとバレニクリンに関し、いずれもその投与に伴い喫煙刺激に対する脳の反応の仕方が変化して、服用した人が喫煙欲求に抵抗しやすくなる可能性がある。

2件の論文のうち1件において、著者らは背景情報として次のように述べている。「ニコチン強化と関連する環境的刺激は喫煙欲求を誘発し、喫煙者の喫煙習慣や禁煙中の人の再喫煙を増やす」。「機能的核磁気共鳴断層装置(functional magnetic resonance imaging。略称:fMRI)およびポジトロン放出断層撮影スキャン(positron emission tomography scanning)を用いた脳のイメージング試験により、刺激誘発性の喫煙欲求と関連する脳領域が明らかにさらた。ニコチン依存症の喫煙者はたばこに関係する視覚的刺激を受けている間、注意、感情、報酬、動機付けと関連する脳領域(それぞれ前頭前皮質、扁桃体、腹側被蓋野、線条体)に活性化がみられる」

ブプロピオンはもともと抗うつ薬として販売された薬で、うつ病患者の禁煙を強化することが明らかとなり、現在では世界で最も一般的な禁煙補助薬の1つとなっている。この薬は喫煙刺激に応答した喫煙欲求を抑えることが知られているものの、その作用機序は十分に解明されていない。1件の研究論文では、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)のクリストファーS.カルバートソン博士(Christopher S. Culbertson, Ph.D.)と同僚らが、喫煙者30例を対象として喫煙刺激に応答した脳の活動の変化について評価した。参加者は、8週間のブプロピオン投与群またはプラセボ投与群のいずれかに無作為に割り付けられた。

参加者らは試験参加から1週間以内にfMRI検査を受け、8週間の投与期間終了時にもう一度同検査を受けた。検査中、彼らには45秒間のビデオを鑑賞させた。その内容は、俳優や女優がさまざまな設定で喫煙する喫煙刺激か、または同様の設定だが喫煙行為のない中立刺激であった。また参加者らは5つのボタンが付いた応答ボックスを用いて、各ビデオの鑑賞直後にどの程度の強さでたばこが欲しくなったかも報告した。

ブプロピオン群は、プラセボ群と比較して喫煙刺激に応答した喫煙欲求の報告が少なかった。またブプロピオン群では、大脳辺縁系や前頭前皮質といった欲求と関連することが知られている脳領域で活動の低下が認められた。投与群にかかわらず、すべての参加者で喫煙欲求の報告とfMRI画像が合致した。すなわち、切望感関連領域の活動低下が認められた参加者は、喫煙欲求の報告も少なかった。

「これらの結果から、ブプロピオン投与に伴い刺激誘発性の切望感に対する抵抗力が改善されるとともに、大脳辺縁系や前頭前皮質の領域で刺激誘発性の活動が低下するのは明らかである」と著者らは結論付けている。

もう1件の研究論文では、フィラデルフィアにあるペンシルベニア大学(University of Pennsylvania, Philadelphia)のテレサ・フランクリン博士(Teresa Franklin, Ph.D.)と同僚らが、禁煙の第一選択薬バレニクリンに対する脳の反応について検討している。バレニクリンは離脱症状を軽減するとともに、喫煙中のニコチンによる強化を抑える。研究者らは、灌流fMRIと呼ばれる神経画像法を用いて喫煙者が喫煙刺激を受けた際にこの薬が脳の反応や喫煙欲求を抑えるのにも有用かどうかを調べた。この検査は、喫煙刺激を受けている間の長期的な薬剤誘発性変化のほか、刺激がない時の脳の長期的変化も測定できる。

22例の喫煙者を、3週間のバレニクリン投与群またはプラセボ投与群のいずれかに無作為に割り付けた。投与期間の前後に、「喫煙刺激のない時」および10分間のビデオクリップ鑑賞中の喫煙者の脳を画像化した。ビデオクリップの内容は喫煙刺激または非喫煙刺激で、喫煙者は喫煙欲求の報告も行った。刺激応答に対するバレニクリンの効果を明確に評価するため、喫煙者は投与期間中も喫煙していた。離脱症状脳の活動にも影響を及ぼすからである。

投与期間前に行ったスキャン検査では、喫煙刺激によって腹側線条体や内側眼窩前頭皮質といった薬物使用の動機付けに関わる脳領域が活性化し、喫煙欲求も報告された。投与期間終了後では、プラセボ群には引き続き同様の活動パターンがみられたものの、バレニクリン群ではそれら脳領域の活動低下が認められ、自己報告による喫煙欲求も減少した。

喫煙刺激がない時のバレニクリン群の脳活動は、外側眼窩前頭皮質として知られる領域で選択的に高まった。この領域は、(喫煙刺激のように)報酬を予測する行動の抑制に関与する。重要なのは、この領域の活動の高まると腹側線条体や内側眼窩前頭皮質の応答が鈍化し、喫煙刺激が脳や切望感に及ぼす影響を軽減するという、バレニクリンの性質の根底にある作用機序が明確に示されたことである。

「我々の試験結果はバレニクリンの新たな特徴的作用を明らかにしており、その作用はこの薬の臨床効果に寄与する可能性の高いものである。」と著者らは結論付けている。「精神疾患を抱える人の禁煙不成功率は比較的高く、そのような人は禁煙が非常に難しいと考えられる。離脱症状および刺激応答を抑えるバレニクリンなどの薬は、喫煙刺激がある場合にも再喫煙しやすいサブグループにはとりわけ有効かもしれない」

 


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