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2011-08-31

ソース(記事原文):BBCヘルス

「抗癌作用のあるウイルス」が有望視

BBCヘルス(2011年8月31日)―ジェイムズ・ガラハー著、BBCニュース医療担当記者

遺伝子工学によって作られた(遺伝子組み換え)ウイルスは、血液中に注入すると、体全体の癌細胞を選択的に標的とすることができるもので、研究者らは今回が初の症例であるとしている。

ネイチャー(科学誌)によれば、患者23人を対象とした小規模試験で、このウイルスは腫瘍だけを攻撃し、正常な組織はそのまま残ったという。

今回の結果により、いずれ治療が「根本的に変わる」日が来る可能性がある、と研究者らは述べている。

癌の専門家らは、ウイルスの使用が「実際に有望」であることが示されたとしている。

癌を攻撃するためにウイルスを使用するのは新しい概念ではないものの、これまでは免疫系を避けるために腫瘍に直接ウイルスを注入する必要があった。

天然痘から癌へ

天然痘ワクチンの開発に使用されていることでよく知られているワクシニアウイルスを科学者らが改変した。

JX-594と名づけられたウイルスは、複製(増殖)するための化学経路に依存しており、この経路は一部の癌に共通して存在する。

体内の複数器官への転移が認められる癌患者23人の血液中に、異なる用量のJX-594を注入した。

最大用量を投与された8人のうち7人の腫瘍内でウイルス複製が認められたが、正常組織内では認められなかった。

主任研究者でオタワ大学のジョン・ベル(John Bell)教授は、「ウイルス療法で、ヒトへの静脈内投与後、癌組織内で一貫して選択的に複製することが示されたのは医学史において初めてであり、大変興味深く捉えている」と述べた。

「静脈内投与は、単に直接注射するだけとは異なり、体中の腫瘍を標的とすることが可能になるので癌治療には欠かせない」。

ウイルスに感染させることにより、患者6人の腫瘍増殖は当面の間、食い止められた。ただし、このウイルスでは癌は治癒しなかった。ウイルスの安全性を検証するようデザインされた試験であったため、患者へのウイルス投与は1回のみであった。

高濃度で癌細胞に直接到達させ治療を行う場合に、このウイルスが使えると考えられる。

ベル教授は、この研究がまだほんの初期段階にあることを認める一方、「ウイルス療法やそれ以外の生物学的療法が、癌に対する治療方法を根本的に変える日がいずれ来ると信じている」と述べた。

英国がん研究所(Cancer Research UK)教授でバーツがん研究所(Barts Cancer Institute)責任者のニック・ルモワン(Nick Lemoine)氏は、「正常組織を避けて腫瘍細胞内のみで複製するウイルスは、難治性の癌を標的とする新たな生物学的アプローチとして実に有望である」と語った。

今回の新たな研究が重要なのは、これまで天然痘の予防接種のため数百万人に対し安全に使用されてきたウイルスを、血流を通して癌に到達するよう改変できることを示したことにあり、体中に広く癌が転移した後でも適応する。

「極めて治療が困難とされる癌、すなわち中皮腫のような腫瘍でさえも効果が認められたことは、特に希望を与えるものである」。