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2016-09-14

ソース(記事原文):News-Medical.Net

気分安定剤が特定の遺伝子型を持つ精神病患者の
陰性反応を減少させる可能性

【News-Medical.Net】(2016年9月14日)

統合失調症や双極性障害を持つ多くの患者に処方される薬が、特定のCOMT変調遺伝子を持つ患者の陰性反応を減少させるかもしれないことが、コロンビア大学医療センター(CUMC)の新しい研究により示唆されている。

バルプロエートと呼ばれるこの精神安定剤は、一般に双極性障害や統合失調症の治療に処方されるが、その作用機序はほとんど理解されておらず、またこの薬が有効な患者もわずかである。動作緩慢、感情鈍麻、社会的離脱などの重篤な精神障害の“陰性”症状に対する治療の選択肢は、現在のところほとんどない。(抗精神病薬は幻覚、妄想や統合失調症など、ほかの“陽性”症状の治療に使用されている)

バルプロエートは、脳内でドパミンを分解するCOMT遺伝子が変調した“Val”のコピーを2つ持つ精神病患者の陰性症状の治療に効果的かもしれない、と著者たちは推論している。この遺伝子型を持つ約40パーセントの患者は、高レベルのプロリン(バルプロエートによって増加する神経修飾物質)を持ち、陰性症状の減少と関係していた。COMTの変調”Met”を持つ患者では、プロリン値の上昇がまったく反対に働くと思われる。そのため、これらの患者ではさらに陰性症状が悪化し、バルプロエートでは症状が改善しない。

この研究は、コロンビア大学医療センターの病理細胞生物学(タウブ研究所内でアルツハイマー病および老齢脳に関する研究を実施)助教であるキャサリン・クレランド博士とコロンビア大学、ネイザン・S・クライン研究所、ニューヨーク大学薬学部の同僚たちにより、9月13日の『Translational Psychiatry』で発表された。

以前の研究では、多量で統合失調症などの精神病と関連する神経伝達物質のモジュレーターであるプロリンの血中濃度の亢進と、脳内で神経伝達物質の正常値を維持する手助けをする酵素を作り出すCOMTと呼ばれる遺伝子との間の作用を立証した。あるアミノ酸の型ではメチオニン(Met)を、またほかの型ではバリン(Val)を含んでいる。それぞれのタイプ(Val/Met)またはこのタイプの2つのコピー(Val/ValまたはMet/Met)の遺伝を受け継ぐ人もいる。追加の研究でCOMT Val/Valは、脳内のドパミンレベルを下げる能力を増強する、より大きな酵素活性を持っていることを示唆した。

この研究で研究者たちは、COMT遺伝子の変調を持つ統合失調症の95人の入院患者の、陰性症状の重篤さとプロリン値を比較した。COMT Val/Valの患者では、症状の重篤度はプロリン値の上昇と共に低下した。反対に、高いプロリン値は、Met/Met遺伝子を持つ患者におけるより深刻な陰性症状の重篤度と関連していた。

バルプロエートで治療を受けていた患者(統合失調症患者の約3分の1)においては、陰性症状はVal/Val遺伝子の人よりもMet/Met遺伝子の人の方がより重篤であった。

研究者たちもまた双極性障害を持つ43人の患者において陰性症状を評価した。その半数の患者はバルプロエートで治療していた。治療の1週間後、Val/Val遺伝子を持つ患者の陰性症状は減少したが、Met/Met遺伝子の患者では現状維持、または増加した。

「この結果を証明するには長期にわたる研究が必要ですが、この研究は、Val/Val遺伝子を持つ患者のプロリン値の上昇は陰性症状への取り組みの助けになるかもしれない一方で、Met/Met遺伝子を持つ患者におけるプロリン値の上昇は反対の効果をもたらすかもしれないことを示唆しています」と語るのはクレランド博士。「この情報は、プロリン値を変化させることで知られているバルプロレートなどの精神安定剤による治療の効果を、どちらの患者がもっとも受けるのかを決定するのに役に立つかもしれません」。


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