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2013-03-07

ソース(記事原文):ケンブリッジ大学リサーチ

画期的:致死性肺疾患の新しい治療法

ケンブリッジ大学リサーチ(2013年3月7日)― ある研究によって、肺動脈性肺高血圧症の新しい治療法への道が開かれている。この病気は進行性であり、3年のうちには心不全に至るおそれがある。

心臓から送り出された血液は、動脈、毛細血管、静脈と体中をめぐった後、肺で酸素を補給して、その後再び体内を循環する。しかし、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者では肺の血管壁が厚くなるため、血管壁の肥厚によって通過できる血液の量が減少し、この補給プロセスが次第に障害されるようになる。やがて、心臓は肺動脈に血液を送り出すことができなくなり、機能不全に陥る。

毎年、100万人あたり10~15 人がPAHを発症し、英国には現在5,000人の患者がいる。ケンブリッジ大学医学部(Cambridge’s Department of Medicine)で英国心臓基金(British Heart Foundation : BHF)心肺医学長(Chair of Cardiopulmonary Medicine)を務めるニック・モレル教授(Professor Nick Morrell)が説明するとおり、PAHは予後不良である。「患者は中年早期の女性が多く、原因不明の息切れと、肺の異常な高血圧を呈します。利用可能な薬はいくつかありますが、病気を安定させるだけで、それ以上の効果を認めることはまれです。肺移植をしなければ、3年のうちには命にかかわる状態となります。」

最近の有望な薬物療法開発が、この病気の治療に革命をもたらす可能性がある。近ごろ完了した第III相試験は、モレル氏のチームと、ギーセン(ドイツ)の共同研究者らによる研究をベースとしたもので、血管の狭窄と直接闘うある薬の有効性と安全性を証明した。

並行する形で、大規模な遺伝子のシークエンシング・プログラムが、英国立衛生研究所(National Institute for Health Research : NIHR)ケンブリッジ・バイオメディカル・リサーチ・センター(Cambridge Biomedical Research Centre)のバイオリソース棟で進行中である。このプログラムではPAH患者の遺伝子を初めて包括的に解析しており、新たな分子的発見につながるだろう。

同大学の基礎科学研究室と、モレル氏が研究ディレクターを務めるパップワースの国立肺高血圧サービス(National Pulmonary Hypertension Service)には強いつながりがあるため、どちらの研究もその恩恵を計り知れないほど受けている。新たな分子的理解を患者の治療にうまく応用するには、このパートナーシップが極めて重要であるというのは明らかだ。また、パップワース病院(Papworth Hospital)をケンブリッジ・バイオメディカル・リサーチ・キャンパス(Cambridge Biomedical Research Campus)に移転させ、ケンブリッジ大学・パップワース病院心肺研究所(Cambridge University/Papworth Hospital Heart and Lung Research Institute)を新たに創設する計画によって、このパートナーシップはさらに強化されるだろう。新しい研究所では、研究者や臨床医らが専用の研究室や処置室で協力して作業ができるようになる。

臨床応用へ向けて

PAHの分子的理解はまだ始まったばかりで、国際コンソーシアムによって遺伝子異常が初めて同定されたのは、ほんの12年前である。この発見によって、タンパク質(骨形成タンパク質II型受容体(BMPR-II))の異常と、PAHにおける肺血管の肥厚の因果関係が初めて明らかとなった。健康な血管では、BMPR-IIは血管内膜の無秩序な増殖を防ぐ複雑な経路の一部である。しかし、BMPR-IIレベルが臨界閾値を下回ると、PAHのように血管の内側が過剰に増殖すると考えられている。

モレル氏のチームは、BMPR-II変異によってシグナル伝達がうまくいかなくなる仕組みを、詳しく解明しているところだ。彼らの研究は、例えば遺伝子治療や幹細胞治療でBMPR-IIの機能を回復させればPAHの発症を防いだり治癒に向かわせたりできるのかといった、異常に対処するための新しい戦略を提案してくれる。もう1つの治療アプローチは、増殖経路の別の部分を標的とすることで、この遺伝子異常の影響に打ち勝つというものである。こうしたコンセプトと、ギーセンの共同研究者らによる重要な前臨床研究が、PAH患者にイマチニブという薬を使用した最近の試験につながった。

第II相試験は、ケンブリッジ大学とパップワース病院が共同で主導し、医学研究会議(Medical Research Council : MRC)とスイス拠点の製薬会社ノバルティスAG(Novartis AG)が資金提供を行った。2010年の試験結果の報告によると、イマチニブによって患者59例の肺の血行動態が有意に改善した。そして今回、14カ国71施設から採用された患者202例を対象とした、ノバルティス社による第III相試験の結果がサーキュレーション誌(Circulation)に発表された。

モレル氏は、イマチニブを使用した根拠をこう説明した。「患者から採取した細胞や組織を使ってPAHに関与する経路を同定した研究と、動物モデルを使った研究のデータから、異常BMPR-IIという問題に対処しなくても、血管の増殖そのものを促進する経路を標的にすればいいことに私たちは気付きました。細胞内で増殖を促進する主要なシグナル伝達経路を媒介するのがチロシンキナーゼですが、イマチニブはその活性を阻害します。イマチニブの働きによって細胞の増殖が阻害されるため、末期のPAH患者でも、動脈の閉塞を取り除くことができます。」

モレル氏は、この研究が同様の作用機序を持つほかの薬にも道を開いてくれればと思っている。「現在の治療選択肢では運動能力と血行動態は改善しますが、肺移植をしない限り治癒に至ることはまずありません。イマチニブはまだPAH治療薬として医療現場で利用できるところまで来ていませんが、この第III相試験が、増殖経路におけるチロシンキナーゼを標的とする薬は、従来の治療が奏効しない患者でも効果がある可能性を初めて示しています。」

PAHは幅広い心疾患・肺疾患グループの中で扱われ、肺高血圧症はサブグループになる。したがって、新しい治療アプローチはほかの心肺疾患の治療にも関連するかもしれないという希望がある。そうした疾患の1つが慢性閉塞性肺疾患であり、この病気は喫煙と関連することが多く、英国には現在500万人の患者がいると推定される。

「この新しい治療法は、望ましい方向へと向かう最初のステップです。これはパラダイムシフトです。なぜなら、現在の治療法とは違って、イマチニブは血管を拡張するのではなく増殖因子の経路を阻害するからです。PAH、そしておそらくは肺高血圧症グループのその他多くの疾患に対して、イマチニブは全く異なる治療アプローチになります」とモレル氏は話した。

1000のゲノム

BMPR-IIの遺伝子異常が初めて発見されてから10年の間に、遺伝性PAHの患者の80%で、BMPR-II遺伝子に影響が出るそのほかの変異が見つかった。ただ、すべての患者がこの病気を遺伝的に発症するわけではない。一部は自然発症であり、多くの場合、その遺伝的構造は依然としてほとんど分かっていない。

すでに新しい大規模な取り組みが始まっており、PAH患者たちから最大1,000のゲノムを集め、そのコード部分(いわゆるエキソーム)の配列決定を行うことになっている。NIHRが資金を提供しており、ケンブリッジ大学のMRC疫学部(MRC Epidemiology Unit)とMRC認知・脳科学部(MRC Cognition and Brain Sciences Unit)が協力した形のケンブリッジ・バイオリソース(Cambridge BioResource)によって、この取り組みは完了する予定だ。BHF遺伝性PAHコホート研究(BHF National Cohort Study of Heritable Pulmonary Arterial Hypertension )(2013年3月1日に開始)の確立のためにBHFが提供した120万ポンドも、この研究努力をサポートする。

「NIHRのサポートを受けながら、私たちはこの10年間、パップワースの患者たちから遺伝研究用のサンプルを収集してきました」モレル氏はそう説明した。「それらサンプルと、英国やドイツ、オランダ、スペイン、米国の肺高血圧サービスとの協力を通じて利用できるサンプルを組み合わせると、次世代シークエンシングのリソースになります。これはPAHの異常を生物学的に把握し、最終的には薬物療法に利用しやすい標的を同定するための大変すばらしいリソースです。」

このシークエンシング・プログラムは2012年末まで継続予定である。「ハイスループット遺伝研究の機が熟した希少疾病として、PAHが選ばれました」と、モレル氏は言い添えた。「遺伝性PAHの大部分はBMPR-IIの変異が原因ですが、そのほかに、まれな変異も関与していると私たちは考えています。このプログラムは、それら変異を見つけて生物学的研究を実施し、変異がどのようにPAHを引き起こすのか理解するためのチャンスとなるでしょう。」

集約の強み

パップワースで活発に行われているトランスレーショナル・リサーチ・プログラムは、基礎科学研究で同定された新しい標的を重症PAH患者で検討できる初のプログラムであり、そうした実践のモデルとみなされることが多いと、モレル氏は言う。「私たちは強く結び付いた形で、トランスレーショナル・リサーチを行っています。多くの信頼関係や友好関係のおかげで、その実現に至っています。」

近く行われる、ケンブリッジ・バイオメディカル・キャンパスの新しい敷地へのパップワース病院の移転と、隣接して心肺研究所を新たに創設するという計画は、PAHの研究および臨床治療にとって大きな前進となるだろう。「近くにあるというのは、とても大きな意味があります」と、モレル氏は続けた。「もし、みんながそれぞれ違うところにいたら、アイデアや克服すべき問題についてすぐに話し合ったり、信頼関係を継続させたりするのは、より一層難しくなります。地理的に、基礎研究を臨床研究の近くに置いたほうが、もっと多くの成果を出せるでしょう。」

詳細については、ケンブリッジ大学渉外コミュニケーション室(University of Cambridge Office of External Affairs and Communications)のルイーズ・ウォルシュ(Louise Walsh)に問い合わせていただきたい。


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