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2010-05-03

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

紫色のツルニチソウで炎症性疾患に対抗できることが研究から示唆

サイエンスデイリー(2010年5月3日) — 広く安全に使用されている植物エキスを新たに抗炎症薬として使用し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療やその他の炎症性疾患の治療として使える日がいずれ来る可能性がある。最も効果的で頻用されている薬剤にステロイドがあるが、肝障害のような重篤な副作用を引き起こすことが多く長期的な使用ができないため、COPD、中耳炎(耳感染症)、アテローム動脈硬化症(動脈壁の慢性炎症)などの慢性炎症性疾患の治療に対する新たな治療法が至急必要とされている。

ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(米科学アカデミー)会報誌5月3日号に掲載された研究によれば、肺炎マウスモデルおよびその他数種類のヒト細胞で試験を行ったところ、ツルニチニチソウという植物から抽出した天然物ビンポセチンが強力な抗炎症薬となることが、ロチェスター医科大学(University of Rochester Medical Center)の研究者らによって初めて発見された。この研究結果では、ビンポセチンにより炎症が大幅に軽減されるが、ステロイドとは異なり重篤な副作用は生じないことが示されている。

本研究の統括著者でロチェスター医科大学Aab心臓血管研究部門の准教授チェン・ヤン(Chen Yan)博士は、「今回の結果のとても素晴らしく有望な点は、ビンポセチンの優れた安全性である」と述べた。「これまで同分野で検討された薬剤の大半が失敗に終わっているのは、有効性の欠如によるものではなく、安全性に問題があったためである。今回の結果は非常に希望を与えるものであり、ビンポセチンによりCOPDやその他の炎症性疾患を治療できる可能性は高いものと信じている」

ビンポセチンは、約30年前に初めて発見された有名な天然物で、現在ヨーロッパ、日本、中国において脳卒中や記憶喪失などの認知障害の予防と治療のためのサプリメント(栄養補助食品)として用いられている。この治療法から患者の毒性または顕著な副作用の所見は認められなかった。ロチェスター大学の研究者らは、同剤をCOPD抗炎症治療薬として再創出することを望んでおり、将来的にはCOPD以外にも、喘息、中耳炎、関節リウマチ、アテローマ性動脈硬化症、乾癬などの炎症性疾患に対する治療薬になることも期待している。

ステロイドは見事な抗炎症作用をもたらす一方、副作用に関しては大きな代償を払うことが多い。ステロイドにより肝損傷が起きたり、免疫力が抑制されたりすることがあり、感染症の確率が高まる。こうした高リスクの側面から一般にステロイドは短期使用に限られるのだが、これは慢性疾患の治療の際に問題となる。

本研究の統括著者でロチェスター医科大学微生物学・免疫学科教授チアンドン・リ博士は、「COPDのような慢性疾患の管理には、長期にわたり安全に使用できる治療法の存在が極めて重要となる」と語った。「長期的ケアを行うときの良い選択肢が現時点でないため、ビンポセチンのような薬がぜひとも必要になる」

ビンポセチンは、IKK(IκBキナーゼ)として知られる特異的酵素の活性を標的とすることによって炎症を軽減させる。IKKは、鍵となるタンパク質(核内因子κB [NF-κB])の活性を介して、炎症を制御することを可能にする。ビンポセチンは、IKKを直接阻害することによりNF-κBの機能(一般に炎症の原因となる炎症促進性分子を生成すること)を停止することができる。つまり、NF-κBの活性を止めることが、最終的に炎症を抑えることになる。

本研究の共著者でロチェスター医科大学最高経営責任者ブラッドフォード・バーク(Bradford C.Berk)博士は、「炎症は様々なヒト疾患の特徴であるため、複数の適応症に対しビンポセチンを使える可能性が高い」と語った。「ビンポセチンの有効性ならびに確かな安全性を考慮すると、この薬を市場に出せる可能性は高いと信じている」

新たな治療法をより早く市場に出すのには、治療法を再創出すること(人間に安全に使用されてきた既知の薬を用いて新たな適応を検討すること)のほうが、一連の発見作業を一から開始するよりも効率的な手段である。

炎症性疾患は、世界各地で主な病因となっている。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、米国における死因の第4位である。COPDの患者は、慢性気管支炎または肺気腫により空気の循環が阻まれ、呼吸困難が徐々にひどくなる。COPDの大半は、長期的喫煙が原因で発症するが、遺伝的特質も関与している可能性がある。米国では毎年約1,350万人がCOPDの診断を受けており、2004年のCOPD年間医療費は372億ドルであった。

本研究は、アメリカ心肺血液研究所(National Heart, Lung and Blood Institute)、米国国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases)、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の聴覚・他の伝達機能不全研究所(National Institute on Deafness and Other Communication Disorders)、ロチェスター医科大学(University of Rochester Medical Center)より研究助成を受けた。大学はビンポセチンをCOPD治療のためのIKK阻害薬として使用する特許を申請した。リ・エン(Li,Yan)博士とバーク博士は、新会社ロック(Rock)製薬を設立しており、ロチェスター大学からの知的所有権のライセンス供与と、この技術の商業化を希望している。

リ・エン博士とバーク博士のほか、本研究に参加したのはAab心臓血管研究部門とロチェスター医科大学微生物学・免疫学科のキム・チョン(Kye-Im Jeon)博士、シアンビン・スー(Xiangbin Xu)博士、ジェ・ヒャン・リム(Jae Hyang Lim)獣医学博士、ヒロフミ・ジョーノ博士、ジュンイチ・アベ博士である。また、Aab心臓血管研究部門の元博士研究員トオル・アイザワ博士、韓国の共同研究者ドンソク・クォン(Dong-Seok Kwon)博士も本研究に貢献している。


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