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2010-04-11

ソース(記事原文):サイエンスデイリー

乳腺領域幹細胞のホルモン感受性が医薬品により抑えられる

サイエンスデイリー(2010年4月11日)
ウォルター・アンド・イライザ・ホール研究所に勤める研究員が、乳腺領域幹細胞は女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンに対し非常に敏感である事を発見した。これは、乳がんの新しい治療法と予防法の開発に繋がる発見である。

幹細胞・癌学部そしてバイオインフォーマティックス学部の研究者らにより発見された乳腺領域幹細胞と女性ホルモンの関連性は、何十年も前から確認されている乳がんと女性ホルモンの間に因果関係が存在することを裏付けてもいる。

この発見は、4月11日刊行のオンライン版ネイチャー誌に掲載されている。

ジェフ・リンダーマン博士と共に研究チームを率いたジェーン・ビスベイダ―博士は、エストロゲンとプロゲステロンの継続的な分泌が乳がん発症の要因となることが証明されたと語った。
ビスベイダ―博士は「月経が多い人ほど乳がんにかかるリスクが高いことを示す明確な証拠が存在し、出産後の短期間に乳がんのリスクが高まる事も確認されている。しかしながら、これらの結論の基となる細胞基盤は未だ十分に解明されていない」と述べた。

2005年頃、ビスベイダ―博士とリンダーマン博士は、乳腺領域幹細胞がマウスと人間の両方に存在する事を突き止めた。しかしながら、両博士は偶然にも、乳腺領域幹細胞には女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲストロンの受容体が欠落していることも発見したのである。この受容体がある場合は、乳腺領域幹細胞は、エストロゲンやプロゲストロンの影響を直接受ける。

現在においては、ビスベイダ―博士とリンダーマン博士並びにマリーリセ・アセリンラバット博士、ゴードン・スミス博士、そしてウォルター・アンド・イライザ・ホール研究所の他の研究員の共同研究により、乳腺領域幹細胞は、エストロゲンやプロゲストロン受容体を持たないものの依然として女性ホルモンに非常に敏感である事が分かっている。

マウスを用いた実験では、卵巣が摘出された場合とホルモン阻害剤(抗乳がん剤として臨床的に使用されている物)の投与を受けた場合において、マウスの体内の乳腺領域幹細胞の数が減り、残った幹細胞も休止状態に陥ることが確認された。
ロイヤル・メルボルンホスピタルの腫瘍医でもあるリンダーマン博士は次のように述べた。「この発見により、乳がん予防を目的として用いられる予防的化学療法の効果が、抗エストロゲン剤の投与を中止した後も長く持続する理由が判明した。我々は研究を通して、妊娠期間中は乳腺領域幹細胞の数が大幅に上昇することも確認した。癌には妊娠と関連性のあるものがある。乳腺領域幹細胞数の上昇により、出産後その類の癌にかかるリスクが短期的に高まる可能性がある」

リンダーマン博士の率いる研究チームとメルボルンの聖ビンセント研究所に所属するジャック・マーティン博士そしてオリエンタル酵母工業長浜生物科学研究所所属の保田尚考博士が協力して更なる研究を行った。その研究によりランクリガンド経路が細胞シグナル伝達経路である事、そしてそれが妊娠中における乳腺領域幹細胞に間接的影響を及ぼすものであることが判明した。

リンダーマン博士によるとランクシグナル阻害剤が過去に既に開発されており、現在ではランクシグナル阻害剤の臨床試験が行われている。その目的は、骨強度を維持する事、そして乳房から骨に転移したがんの治療に役立てる事である。「我々の研究結果が意味するところは、ランク阻害剤又は他の幹細胞経路に作用する阻害剤が、乳がん予防の可能性も秘めた未来の癌治療のあり方を示しているということである」とリンダーマン博士は述べた。

この研究は、ビクトリア乳がん研究コンソーシアム/ビクトリア癌エージェンシー、スーザン・G・コーメンファウンデーション、ナショナル乳がんファウンデーション、国立保健医療研究委員会、そしてオーストラリア癌研究ファウンデーションの支援を受けてなされたものである。